第1章 賢者の石 第1話

目覚め

待ちに待った魔法薬学の初日の授業は案外早くに来た。
朝は入学を機に購入した目覚めさせる気の皆無そうな目覚まし時計のクラッシックの音とハーマイオニーの声とともに起き、制服を着て、髪を赤のリボンでハーフアップに結う。グリフィンドールの赤と同じ色のリボンは昨日届いた入学祝いの一つである。そこに実母の形見というブローチをつけ再度軽く梳かす。
これで身支度は終わり、と眠気を噛み殺し、目をぱちぱちと瞬かせながら朝食の席へ向かう。もし許されるのならふかふかのベッドにダイブして二度寝を決め込みたいところだが、そんなこと私の立場とプライドが許さない。……ちょっとくらい良いかな…? あまり長い学校生活で肩肘はるのも良くないよね。寮の自室くらい…。
 そんな欲望が芽を出した。  いやでもせっかく支度したのに崩すのもったいない。やめとこ。
 脳の冷静な部分で何とか欲望を抑える。
諦めておとなしく寝ぼけた頭でハーマイオニーたちと共に食堂に行った。
食事を取り、先生の作ってくださった薬を煽り完全復活を果たす。
いやー眠かった。眠かった。

飲んだ薬の色があまりに禍々しく、魔法使いらしいからかハーマイオニーが眉をしかめていた。朝っぱらから何飲んでるんだという胡乱気な視線を軽く受け流して席を立った。
 ハーマイオニーとハリーとロンと一緒に薬学の教室へと向かう。ハーマイオニーと一緒に向かっている道中に迷っているハリー達を見かけて誘った流れだ。頭の中がわくわく一色の私と違って、ロンはどこか憂鬱そうだった。

唇を尖らせてロンが愚痴った。

「あら、そうかしら?」

からかうような声音でたずねて 「なにいって…ああ、君はマルフォイだから…」
「お父様と先生は親交があるのよ」
「では、お会いしたことがあるの?」
「ええ」
「どんな方なの?」
「魔法薬学の知識や能力に関しては文句がつけようがないわ。一流よ」
「性格は?」

ロンがどこか焦れったそうに聞いた。

「…悪い人では…なくってよ」

さすがに善人だと言い切るのは気が咎めて口をもごつかせ、目を逸らしてしまった。
 あまり嘘は得意ではないのだ。
それだけで悟ったのだろう。眼前のグリフィンドール三人衆は憂鬱気に肩を落とした。ハーマイオニーさえもである。

ホグワーツでの生活はまだ慣れない。しかし、だからこそわくわくするものである。
であるからして、わざわざ地下まで降りねばならないような立地の魔法薬学の教室へ向かう足取りは軽い。三人は口をひん曲げてしまっているけど。ハリーとロンは愚痴をこぼし、ハーマイオニーはそんな気難しい教授ならと、教科書片手にながら歩きをしている。階段でもするものだから私はひやひやしてしまう。唐突に動くというのに。様子を伺いながら何かあったとしても支えられるようにと、ハーマイオニー側の左手を常に開けている。もしもの際、かの有名なウィンガーディアムレビオーサ浮かせられるのだろうかと思考して魔法の練習をしようと決意した。魔法大戦は六年後に迫っている。最低限、動けるようにならなくては。いつどうやって練習しようかと算段をつけていると気づかぬうちに魔法薬学の教室まで来ていた。

じめじめとした空間独特の水の匂いに黴臭さが混ざった香り、そしてそれに充満する薬品臭さ。ハーブなどの薬草の薫風も鼻をくすぐるけれど、それが余計に魔法薬学の教室の香りを混沌へと染めている。
暗い教室に壁一面の薬瓶。あちこちの動物の骨格は先生の趣味だろうか。悪趣味だなあ、と眺めながらハーマイオニに並んで最前列を陣取った。ほんとうは授業で最前だなんて冗談じゃないがスネイプ先生の授業なのだから、まあ、しかたのないことである。楽しみだなあ、とわくわくした気持ちを笑みにこぼしながらうきうきと待機しているとバァンと大きな音が鳴る。驚いて少しばかり肩を震わせた。

「何かしら」

咄嗟に出たような小さな呟きが耳に入る。同意見だと思いながら顔を背けた先には
何を笑っている?Ms.ポッター …失礼、先生。

随分とまあ大層なご演説にくすりと笑いが溢れる。
しまったという顔をされたが後には引けないのだろう。

「名称以外に違いはないかと。どちらも同じ植物__トリカブトを指します」

酷いお人だと笑みを湛えながら朗々とミッシェリーナは答えた。

にしても珍しいこともあるもんだ。まさかグリフィンに点数を与えるきっかけをつくるだなんて、と思いながらよくよく考えると顔を見たときにしまったという表情をしていた。つまりは間違えたのか、この先生。ハリーへの嫌がらせと知り合いの子供ということで私がグリフィン生なことをすっかり忘れていたらしい。そういえばいとこがいるよな同じ名字だよな対比に良さそうくらいにしか思っていなかったことが判明した。殺意。

マルフォイ家の教育のお陰か外面を取り繕うのはすごく得意なのである。

うわっ!ぐっろ!全身、粟立って鳥肌が立つ。入学前にグロくないやつ(薬草とか粉末とか)だけで作っていたときは幸か不幸か感覚でなぜか作れていたし、何なら先生が教えてくれていたからできたけどこんなグロいの扱うなんて無理…。
 これからの魔法薬学の授業どうしよう……?

「ではこれにて授業を終了する」

なぜだろう、普通にできた。 あんまりなんとも思わなかったし一応目つぶるとか言う実験中に一番してはいけないであろう行為をしたのに普通に完成したのである。やばい
ペアであるハーマイオニーが優秀ということもあるだろうけど。

なんとも悶々とした感情を抱きながら歩いていると視界に黒髪に囲まれた金髪が入る。咄嗟に避けるか悩むがドラコと目があってしまう。気まずげに目をそらされ思わず苦笑した。ずいぶんとかわいらしい反応だ。

「どうかしたの?…ああ、ドラコ・マルフォイね」

 立ち止まった私に横を歩いていたハーマイオニーが首を傾げた。

「ええ、弟よ」
「大変そうね」

私の言葉に目を細めたハーマイオニーが言いにくそうにそう呟いた。

「…そうかしらね」

「まあ…仕方がない気もするけれどね…」
「仕方ないなんて何で思うの?」

アーモンド型のエメラルドの瞳を可愛らしく瞬かせながらハリーは尋ねる。微笑ましく思いながらも少し困った表情でミッシェリーナは答えた。

「あー…貴方にトラウマがあるのよ。先生は」
「どういうこと?」
「…そのうちわかるわ」

ほんとうにその内わかる。その父親譲りの容貌も澄んだ美しい緑の瞳も。その全てがスネイプ先生の地雷だということを。

次は防衛術である、教師が毎年変わる呪われた科目。闇の魔術へ対抗するための学問が呪われているのは何だかおもしろい。

そして、なんといっても例のあの人もといヴォルデモートを後頭部に取りつかせているの授業だ。

うん、くさい。
いっそ暴力的なまでの匂いである。においの重いカーテンが上からかけられている気がする。私の体からにおわないだろうか。不安である。授業も全然集中できなかったし。どうしても後頭部をターバンの奥へちらちらと視線を送ってしまう。だって気になる!無性に。
あれでどうやって寝るんだろう。横向き?お風呂とかトイレとかどうしているのだろう。ていうかどうやって頭洗うの?頭に植えられていて脳に何か影響とかないのかな?皮膚とかの表面だけなのだろうか?蒸れたりしないのかな。常に顔にターバンが纏わりついていて気持ち悪くないのかな。
 頭の中を疑問が駆け巡っていて全くもって授業どころではない。
 集中できないミッシェリーナの横ではなんとも言えない顔をしたハーマイオニーがクィレルの告げた言葉をそのまま写している。

あとがき

ザビニについて捏造ばかりで申し訳ないです。