優しい人だと、思っている。 他者への酷薄さを知らぬわけではない。だからこそ、自身へ向かう情愛を感じて優しいと思えるのだ。 私は元七武海・鷹の目が妹、ジ・ミカーラ 兄さんに仇なすものは全員私がぶっ潰す 神が……堕ちる お金は兄が用意してくれていた。 兄が言っていた。面白い男を見つけたと。見込みがあると。 ご相伴に預かりまして。 お腹が満ちると眠くなるのが人体の道理。 「お前は休んでおけ」 「はい、兄さん」 そう頷き兄の持っていた本を預かる。そして、邪魔にならぬよう後ろへ下がった。 「兄さん以外と手合わせしたことない」 お役所勤めは大変ね 私の世界は兄だけであった。 最古の記憶はゆらゆら揺れる水面とそこに浮かんだ船の上で私をあやす兄の大きな手。生まれたときから側にいて守ってくれた。親の話も何もなくただただ家族二人で生きてきた。 生まれたときから二人だけであった。 私たちはこの広い広い世界で、この広い広い海で、たったの二人っきりであった。 この人はほんとうに兄なのだろうか、たまにそんな疑問が頭をもたげる。 親子というには近く兄妹というには遠い年の差で、私はこの人の何なのだろうとたまに思った。 愛している。愛されている。言葉はなくてもそれぐらいわかる。 考えて、そのたびにくだらないと首を振る。それだけで充分なのだ。充分なはずなのに。 兄は私が物心ついたときには既にそれはもう強かった。 だから、私も強くなろうと思ったのだ。 あなたに恥じぬ妹になるために。 あなたに誇れる私になりたい。あなたが誇れる妹(わたし)になりたい。 ジュラキュール・ミホーク あなたは私の兄。 たった一人の家族、私にとっての唯一。 私はあなたを愛している。 麦わらの団員の所感としてその女は普通の女であった。 しかし、自身達との出会いは普通ではなかった。 何があったかは知らないが小船に揺られてやってきたのだ。船と呼べるか怪しいような人一人しか乗れない小船に、護身用であろう剣と、本とわずかな食料。そして電伝虫のみと共に東の海(イーストブルー)に漂っていた。 良くもまあ無事で、と言いたくなるような状態であったし、何よりも怪しかった。 とはいえ、その時点で仲間はルフィ、ゾ、ナ、ウの四人だけであったし、出会いから大して経っていなかった。ナに関してはまだ自身は仲間ではないと主張していた。それゆえ、女だけが怪しいかというと首を傾げねばならなかったのだ。 はじめに気づいたのは、ルフィであった。 「何か変なもんが流れてる!」と言い出したのだ。いったい何事かと海を覗くとぷかーと小さな船が浮いていてあわやこのままではぶつかるのではないかといった様子だった。 ぶつかった場合あまりに小さな相手の船は大破してしまう。 船の上に人影が見えて人間が乗っていることに気づいた。小さな様子から何やら船上で座って本を読んでいるらしい。よっぽど集中しているのか相手はこちらの船に気づいていないようだった。 (このままではマズい…!!) そう思い焦った面々は両手を振り、必死で声をかけた。 「おーい!誰かいるのか!」 「何してんだ?ぶつかっちまうぞ!」 そう怒鳴るように呼び掛けると影が動いた。張られた声が聞こえる。 「わっ!気づきませんでした。ズレていただけますか?」 女にしては少しばかり低いがとうてい男には聞こえない声であった。マイペースにこちらに進路変更を願い出てくるが、号と舟の距離感は衝突まで残り5分といった距離であった。無茶である。 「そんなのムリよ!!ちょっとルフィ!こっちへ引き上げられない?」 「わかった!!ゴムゴムの~!!!」 ルが手を延ばし人影へ向けた。向かって来た手に目的を察したのだろう。驚いた様子で人影は慌てて荷物を袋に詰めていた。 ルフィの腕に戸惑いながらしがみついた。 ぺしゃ、と船に落とされる。平衡感覚が良いのかルに乱雑に落とされたにも関わらずたたらを踏みはしたものの、転ぶことなく船の上で直立した。 とはいえ荷物の入った袋は落ちてしまっているが。 人影は女であった。しかし、身体に凹凸は少なく、どこか中性的であった。女は丸い瓶底のゴーグルを外さず黒髪はきっしりと三つ編みされていた。 白いワンピースに黒のベストを纏っており、その姿は普通の一般人。せいぜいちょっと裕福なお家のお嬢さんといったようだった。ゴーグルが特徴的ではあるが。 彼女が引き上げられ数十秒後、彼女の小船にぶつかり船が揺れる。咄嗟にナミが彼女の体を支えるように掴んだ。それもあってうまくバランスを取れたのか彼女の体が傾き、転ぶことはなかった。 残念そうに船の残骸である木片を眺める。彼女に、何をしていたのか尋ねるときょとんとしながら至極当然そうに「旅をしているの」と言った。 「あの小さな船で?」 「うん」 「旅を?」 「うん」 「どこから」 「えーと、偉大な海の……」 「待って偉大から来たの?こんな小さな船で!」 驚愕するナミを置いてちゃんと必要なものをあの短時間で詰められたのか気になったのだろう。鞄の中をゴソゴソと漁りだした。 「あなた…良く無事だったわね……」 呆れに満ちたナミの声にふと彼女は顔を上げ袋から細身の剣を取り出す。どこかふふん、と言いたげな表情でその剣を掲げた。 「何?剣?」 「はい、これがあるから大丈夫だろうって」 ついにナミの表情は呆れに溢れきった。 「そんなわけないじゃない。こんな剣で何ができるっていうの」 剣は細かった。それを振るうのであろう主も華奢で細く、背も高くはなかった。彼女が片手で掲げられることからしてその剣もあまり重くはないのだろう。 それが察せられるからしてナミはともすれば馬鹿にしているような言動をしてしまったのだ。無論、ナミに馬鹿にする意図はなくそのことを伺えたのだろう、女もいきり立ったりはしなかった。 とはいえ、むう、と唇を尖らせながら拗ねたように女は袋の中に剣を収めた。 「あなた、これからどうするの?」 小さいとはいえ彼女にとっては旅を共にする立派な交通手段である。その船は呆気なく破壊されてしまった。自身たちの船によってだが。 ふむ、と彼女は顎に当てしばし考え込んだ。差したる時間ではなかったが早々に結論は出たらしい。顔を上げナミへ視線を向けた。分厚い瓶底のゴーグル越しではあるものの、その視線は鋭く真剣なことを感じ取った。 「私をこの船に乗せてくれないだろうか」 ※ お察しの通り、横で聞いていたルフィが軽く「いいぞ!」と告げた。 「いいの!?」こんな華奢な女の子に何ができるんだ、といった意味も込めてナミが抗議の声を上げるも「ワハハ」と笑って受け流されはあ、と一同は溜息をこぼした。 とはいえ、あんな小さな船で航路から東までやってきた冷静に考えれば化け物である。いったいどんな隠し玉があるのだろうと尋ねる。 「何かできることとかある?特技とか」 「うーん、会計……とか?」 「ええっと、他には?料理とか」 「無理」 即答である。さすがに仲間内に加わったばかりの人間に財布を握らせるのは……と思い尋ねたナミの言葉は叩き落とされた。 「……私、ちゃんと料理を作れたことがない。食材がもったいない。最低限の手当とかならできる」 淡々とした口調や声音ゆえに聞くだけであれば「やる気あんのか?」と思うが、困った様子で宙を眺めながらできることを考える女は真剣である。ナミは助け船をだす。 「でも偉大なる航路から来たのよね?東の海まで。ということは航海技術はあるんじゃない?」 女は目に見えて顔を輝かせた。盲点であったらしい。 「でも、うちにはもう航海士がいるだろう」 ゾロが水を差した。瞬間喜色に満ちていた顔をみるみる曇らせる。自身より小さくどこか幼げな、末っ子気質というのだろうか?庇護欲をそそる振舞いの女が落ち込む様子にナミは思わず女を抱きしめて、ギャンとゾに噛みつく。 「ちょっと、ゾ!何言うのよ!第一、私は仲間じゃないってば!」 女はナミの胸元に顔を押し付けられながら落ち着かないのだろう、目を瞬かせていた。もぞもぞと動いて、「ぷはっ」という音とともに顔を腕の輪から抜け出させる。 「あなた方はどこを目指しているのですか?」 「新世界」 「新?」 「ああ!海王になるために!」 唐突に会話に入ってきたルに驚いて肩をはねさせるナミとは対照的に女は冷静だった。首を傾げながら「…王ね」と呟いた。顎に手を当てながら女は尋ねる。 「になりたいの?」 「ああ!!」 「ふーん」 女はふむふむと頷き、ルフィの方を向く。 「じゃあ偉大なる航路に行くんでしょう?」 「ああ!もちろんだ!」 「じゃあ、偉大なる航路からここまで旅をしてきた私の知識は役に立つ?」 「?ああ、そうだな?」 あまりよくわかっていないだろうルフィの力いっぱいの肯定にふむふむと女は頷く。マイペースな二人の空間に他のわらのメンバーは傍観を決め込んでいた。 「今はどこに向かっているの?」 素っ気ない口調だがどこかふわふわとした空気を纏っている。変わったゴーグルによって瞳の輪郭はぼやけていて感情を伺うことは難しいが。 女はくすくすと笑っていた。 「ふ、ふふふ。気持ちいいオーナーさんだね」 そう? 「海兵はあまり好きじゃないの 薄々感じていたがこの女、天然である!! 第2話棹姫鷹 ぼーっとしていたのが良くなかったのだろうことはわかっている。 私は二月ほど前に家族のもとから離れ、船旅をしていた。うちにある船は兄の物しかなくて、それを勝手に持っていくわけにもいかず困っていたときたまたま暮らしていた小さな島に木の小船が流れてきた。 ところどころ破損はあったが、家にあった木材でせっせと修復し「ちょっと行ってくるね」と言い最低限必要なものを片手に着の身着のまま飛び出した。 何の覚悟もなく飛び出したわけではなかったけれど家族に大切に愛されて育った自覚のある私に、広大な海のなかで一人、ぷかーと浮かぶのはなかなかに堪えた。 食事は干物ばかりで時たま立ち寄った島で暖かな食事を取れるぐらい。二週間ぶりにまともな食事にありつけたときは兄の作ってくれていた食事を思い出してしまって、思わず泣いた。 そういうとき、家族のもとに帰りたくなる。 「一人旅をしている」と言うと不思議そうな顔をされる。胡乱気な、信じられないものを見る眼差し。訳ありなのかと気遣いながら「うちの村に住むかい?」と言われたり「こんな御時世に女一人で旅をするなんて…何があるかわかったものじゃないよ…」と言われたり。女の一人旅というのはこの広大な世界でも存外珍しく、目立つものであるらしかった。 何故、そう言われるのかはわかっている。私にも弱い自覚はあるのだ。私の兄はとんでもなく強かった。だからこそ自分の弱さは誰よりもよく知っている。強い人だ、兄は。その強さに甘え、その庇護のもとのうのうと生きる自分が許せなくて旅立った。なのに私は何一つとして未だ成長できていない。 旅の途中、何度か襲われた。 家族と共にいたときはそんなことなかったのに。 変な輩に近づかれることなんてなかったのに。 むしゃくしゃしながら兄に守られていたんだ、と何度奥歯を噛んだか。 今までの自分があまりに嫌で、髪もきつく結び、特徴的な瞳を隠すためにゴーグルを買った。 少し視界は悪いけど、兄なら何の障害にもならないのだろうと思うと悔しかった。 (そろそろお風呂に入りたい……) 目的も行き先も決まっていないこの旅の終着点をどこで迎えるか。慣れぬ一人旅に疲れかけながらぼーっと空を見上げていた。 「クゥーエックゥーエッ」 きょろん、とした黒い瞳がこちらを見た。真上を滑空するカモメの鳴き声とざぶざぶという波の音に安心する私がいる。幼いころから船旅をしてきたから海の上での暮らしに不安を感じたり、船酔いすることはない。 ぽかぽかと、暖かな太陽の陽射しに晒される。じりじりと露出している部分が熱せられている。船旅だけど、あまり露出すると兄が嫌がったから私の身体のほとんどは布に覆われている。 そう考えて自嘲する。兄はこの場にいないのに。私が置いてきたのに。 (けれど……) 兄は私がいなくても何の問題もないだろう。家族だからこそわかる。兄は私がいない退屈だと言ってくれたけど、私がいても「暇だ」と言っているから。───嘘吐き そんなこと口が裂けても言えはしないが。 「優しいんだね」 静かな声だった。気づいたら風は止んでいて、その静けさの中で凪いだ声を出していた。どこか穏やかさを孕んだその声音には。 ゾッとした。 「いっ…!」 ぴりり、と引き攣るように走った痛みに眉を顰める。 一昨日負った擦り傷は思ったよりも皮膚を抉ったらしかった。 (……怪我なんていつぶりだろう。) この人はほんとうに兄なのだろうか、たまにそんな疑問が頭をもたげる。生まれたときから側にいて守ってくれた。親の話も何もなくただただ家族二人で生きてきた。 親子というには近く兄妹というには遠い年の差で、私はこの人の何なのだろうとたまに思った。 愛している。愛されている。言葉はなくてもそれぐらいわかる。 考えて、そのたびにくだらないと首を振る。それだけで充分なのだ。充分なはずなのに。 兄は私が物心ついたときには既にそれはもう強かった。 だから、私も強くなろうと思ったのだ。 あなたに恥じぬ妹になるために。 あなたに誇れる私になりたい。あなたが誇れる妹(わたし)になりたい。 ジュラシックパーク あなたは私の兄。 「海賊王ね…」 (しょうもな)心の中で吐き捨てる。冷めた瞳で見てしまっていることを自覚している。声に出すなんてことはしない。 《”海”ゴール》その存在にあこがれる人間がやまのようにいることも、そうして海へと旅立つ人間がごまんといることも私は知っている。 何人も見てきたその存在に憧れる人間を。手を伸ばす人間を。《秘宝》それがほんとうに存在するかは知らないけれどその存在を追い求める人間を見る度にどうしても冷めた感情になってしまう。 口が裂けても言えないけれど。しょうもない、そう思ったあのタイミングで言ったら私の首はとっくに胴体とおさらばしているだろう。 兄が守ってくれると言っても限度があるから。 鼓膜を聞きなれた声が震わせた。低い声は私に安心感だけを与え……聞きなれた声?声!? 思わず飛び起きる。 慌てて駆け出し甲板から下を覗く。その視界に入るのは剣を振るうゾとそれを受け止める…… 「兄さん!」 甲板から身を乗りだし叫ぶように声をかける。 ゆるりとした仕草で振り返った兄の視線が私を貫く。 目があった。 「ああ、ミリアナか。お前、ここにいたのか」 驚きを灯して微かに見開かれた眼差しにこくり、と私は肯定する。 「うん、言ってなかったっけ?」 「ああ、ルーキーの船に乗ったのは聞いたんだが」 「そっか……それは、ごめんなさい」 しょんぼりと肩をおろして告げる。兄への情報に不足があって、それで兄を動揺させてしまったというならそれは私の責である。 「いや、何も気にすることはない」 「ねえ、兄さん!な、何やって……」 会話をしていくうちに冷静になって兄の姿を改めて見る。ゾの心の臓の前に向けられた十字架にひやりとする。 「」 止めるか逡巡する。 兄は止めるのを望んでいない。 上げかけた手を下ろし、瞼を伏せる。 兄さんの望みを邪魔することはできない。 だけど。 「待って!兄さ……」 「兄さん!!」 「待ってください、兄さん。私…せっかくお久しぶりに会えたのです。もうちょっと一緒にいれない……?」 特徴的な十字架へと飛び移る。兄がやはり恋しくて、みっともなく追いすがる。 (久方ぶりに会えたのに……。) その思いを捨てきれない。 自分を拾い匿ってくれた恩はあるが兄の前には有象無象。 「兄さん、また何だかボロくなっていませんか?」 ───その言葉を聞いて胸を疼くのは胸中を渦巻くのは 激しき憎悪、妬心。 「そろそろ帰りたがっているかと思ったが……杞憂だったようだな」 ぽつり、と呟かれた声に顔を上げる。どこか普段より暗い瞳。でも、柔らかい目元や口角には慈愛が滲んで見えた。 「?うん!」 にっこり微笑む。大好きな兄さん。あなたに会いたかった。ずっと側にいただけに離れていた期間の寂しさは尋常ではなかった。 「あのね、兄さん」 兄には会いたかった。けれどまだ帰るつもりはない。たった二人きりの島で 動物は好きだった。 ふらふら揺れる船旅で側にいたのは兄とカモメだけだったから。 (良い香り……) 空腹を刺激する匂いが鼻をくすぐりクン、と鼻腔に空気を取り入れ目を開く。 見慣れた天井が視界を覆う。ふわりとした掛布団の感触と背中越しに感じるシーツの清潔感。自身の頭をまるで包み込むように沈ませる枕。全てに見覚えがある。 「私……どうやって帰ってきたんだっけ…?」 兄が朝食を作ってくれたのだろう。 「ねえ、兄さん…」 「ん?」 「私…悪魔の実、食べたほうがいいのかなあ…?」 「…何故だ?」 「私、このままだともう…強くなれない気がする…」 「…それは」 「私しばらく剣を握るのやめる」 「…っ!本気か!」 目を見開いた兄に私はいじけたように唇を尖らせた。 「そりゃ木刀での素振りは毎日やるつもりだけど…真剣はしばらくご無沙汰した方がいいかなって」 「ねえ、兄さん。私ちょっと出かけてくるね」 そういって彼女は帰って来なかった。 「お前……」 思わず目を剥いた。 「その歳になって正義なんてもの、ほんとうにあると思っているの?」 名を呼ばれた気がして振り返る。 「兄さん!」 「兄さん!私…」 「それで、強くなったのか?」 「兄さん……」 別に酒は好きでも嫌いでもない。兄の相伴に預かることはあったけど、好き好んで飲みはしない。 のんびりとグラスを傾げる一時は好きだが気をやるほど飲むわけではない。 ぴっと剣を振る。細い切っ先から血が飛び、跳ね落ちた。鞘に納めて振り返る。 守られ、ただ強さを求めていたあの頃とは違う。あの小さな島では手に入らなかったモノ。 貴方は信頼に応えてくれた。 あなた方は私の期待に応えてくれた。…だからもういいかなって 「聞かないの?」 「何をだ?」 きょとん、と目を瞬かせるルの姿を見て形容しがたい感情に襲われた。胸元はなんだか暖かくて、柔らかで、薄ぼんやりとしたその感情を私は知らない。 海がきらきらと輝いている。 「海ってこんなに白かったっけ……」 柔らかな風が頬を撫でる。髪を潮風が包み込んで後ろへと流す。潮風を受けると髪がぱさぱさする、とどこかの町でぼやいている少女がいたけれど、小さな頃から海上暮らしをしているからか私の髪がたかだか潮風に吹かれただけで潤いをなくすことはない。 どこか鼻の奥をつん、と刺激する温い風はただただ心地よい。 「クゥークゥー」 マストの先を突き刺す日光に目を眇めながら仰ぐと、白い羽毛に埋もれる黒い瞳がこちらを見ていた。 頬を紅潮させ、兄の話をする姿を思い出す。 その時だけ毎度跳ね上がる語尾に彼女の兄への愛を感じた。 「だってお前、弱くもなければ根性なしでもないじゃん」 平穏な船旅であったわけではない。大渦に巻き込まれたことも 同じ場所に居続けるためには常に走り続けなきゃいけないの!兄さんは最強でいるために常に鍛錬し、努力し続けている 「に、兄さんが……」 顔を青ざめ手を口元に当てている。絶句。 「兄さんが人の下についたあぁぁぁ!!!!」 「う、嘘!ありえない。誰?誰なの?あの兄さんを従えさせるなんて?何者なの?何様のつもりなの?ふざけんなよ!はぁ!??」 戸惑いを越して最後はもはや逆ギレである。
あとがきなど
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